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ブータンの農業機械化(2):スリランカでの経験交流プログラムの開催

大石常夫(ブータン王国農業機械化センター)

 

国際協力機構JICA「ブータン王国農業機械化強化プロジェクト(フェーズ2)」の活動報告第2弾として、ブータン国の農業機械化センター(Agriculture Machinery centre:以下AMC)の職員達とスリランカを訪問し、経験交流プログラムを開催してきましたので、その様子を報告します。

 

ブータンの農業機械化プロジェクトに関わり始めた当初から、スリランカの農業機械関係者との経験交流が効果的ではないかと感じていました。と言うのも、小生は2003年から8年間スリランカに住み、その間農業機械の事業に関わったわけではないものの、農業機械事情を垣間見てきました。特に、日本の支援で供与された農業機械が末端の農民組織に属する農民に届き、組織内で共同利用される活動は、コミュニティ活動が活発なスリランカならではの好事例です。また、AMCの研修セクションや研究開発セクションと大変類似した組織もスリランカに存在しています。昨年11月にAMC所長と2人で訪問先の選定等の準備のためにスリランカを訪れた後、今年2月に本プログラムを開催する運びとなりました。

今回スリランカを訪れたのは9名のAMC職員です。経験交流のテーマを(1)政府による農業機械の貸出サービス、(2)民間の農業機械の貸出サービス、(3)研修活動、そして(4)研究開発活動の4つに設定し、それぞれ2-3名ずつのグループを作りました。AMCの関連業務やブータン国内での事情を元に、スリランカで何を学ぶか明確にし、質問票も作成して、事前にJICAスリランカ事務所を経由して、スリランカの関係機関に配布しました。

2月8日の第1日目は農業省の農民支援局および農業局を訪問して、基本情報の収集と技術的なディスカッションを行いました。第2日目と4日目には、地方にある農民支援局の末端組織である農民サービスセンター2か所を訪問し、センターが行っている農業機械貸出しサービス、農民支援銀行、農民組織などについての話を聞くと同時に、ブータンでAMCが行っている農業機械の貸出サービスを紹介し、サービス改善のための話し合いをもちました。また、農業機械の貸出ビジネスを行っている農家も訪れ、今後のAMCの貸出サービス発展のために大変参考となる情報を得ることができました。

 

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農民支援センター

農家へのインタビューの様子

 

第3日目には、農業局傘下のFarm Mechanization Training Centre(FMTC)とFarm Mechanization Research Centre(FMRC)を訪問しました。AMCにはAgriculture Machinery Training Centre(AMTC)があり、FMTCと似たような研修を実施しています。研修対象も政府職員・農家・大学生で、研修コースも研修期間も類似しています。ここでは研修カリキュラムの開発方法や教授法といった大変具体的な内容の議論が行われました。また、FMRCでは室内での議論だけでなく、FMRCが開発した機械のデモンストレーションが圃場で行われ、モロコシむき機や稲籾の播種機など、すぐにでもブータンで実用化できそうな機械もあって、機械論議に花が咲きました。

 

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FMTCの敷地内の様子

研修用機材

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FMRCが開発した機械

FMRCが開発した機械2

 

5日目は地方から首都のコロンボに戻り、関係機関への報告を行いました。今回のプログラムを通して、AMC職員が4つのテーマに沿った様々な情報を得て、彼らの業務改善のための学びを得たことは大変有意義でした。また、スリランカ特有の農民サービスセンターや農民銀行の仕組みについても学ぶことができ、これらがスリランカの農業機械化のみならず、農民の力をつけることに大きく貢献してきたことを知りました。今後のブータンの農業機械化を考えていくうえで、大変有用な学びであったと言えます。

ブータン帰国の翌日、さっそく帰国報告会がAMCで開催され、今回のプログラムで学んだことを元に、参加者各人がどのように業務改善に取り組むかが活発に話し合われました。スリランカとブータンの農業技術者たちが今回交流し、人的なつながりもできました。今後は両国が共に発展していけるようなお手伝いができるとよいと感じています。

(続く)

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