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チェンマイ大学での貢献(7):伊藤信孝チェンマイ大学客員教授・工学部

~日立国際奨学財団の図書寄贈事業~

ここに紹介するのは筆者が主導的に実施してきた、あるいはしている事業ではない。しかしチェンマイ大学に招かれて以来、年に一度、数回に亘り参加させていただいてきた経験から紹介を兼ねて報告する。この事業の継続的実施は標記の財団であり、アジアの多くの国からの留学生に奨学金を支給・支援している。三重亜大学に在職時から何人かのタイからの留学生の受け入れに伴い、深い関係を持って頂いている。

この財団については本来の趣旨とは異なるので詳細な説明・紹介は省く。海外、特にアジアの国からの留学生の奨学金支援が主たる事業内容であるが、特徴としては修士や博士課程の教育プログラムを終えて帰国してからも、大学関係に勤務するかつての留学生(奨学金受給者)が、国際学会やシンポジウムに参加し、論文発表したい場合には申請し、所定の審査を経て渡航費などの支援を受けることが出来ることである。

 さて話題を本題に戻す。ここで紹介するのは少数民族が居住する遠隔地に位置する小学校・中学校(その多くは小・中学校が同居)で、学年も学生数も定員として定まっていない)に一定量の図書を寄贈する支援事業である。事前に図書の寄贈を希望する学校からの要請を受けて、希望の書籍を準備し、直接現地の学校に届けるものである。一度に1校につき日本円の金額にして10万円程度、書籍の量はA3サイズで深さが30cmほどの段ボール箱を7~8個ほどである。かつて奨学金を受給した関係者が積極的に協力して財団のスタッフと共に現地の学校を直接訪問して届ける。段ボール箱を開封して、中の書籍を取り出し、机や棚の上に並べる。外の運動場で遊んでいた子供達が列をなして教室に入ってくる。校長先生を始め教員やスタッフが揃い、相互の挨拶と趣旨説明がなされる。子供達の目が変わる。輝きに満ちた目で手当たり次第に本に手を伸ばす。如何にも嬉しそうである。同行した日立のタイ側スタッフがその内の一冊を手にして開け、子供達の方に広げて、大きな声で読み始める。子供達の目がその開けられた本の頁に集中する。終わることがないかのごとく子供達の目が本に食い入っている。同行の代表者が簡単な挨拶と寄贈の趣旨を交えて挨拶する。校長先生からの返礼の言葉がある。筆者にも「一言を」と誘いが掛かる。教育の重要性は今更言うに及ばない。大学で教えている「大学生も昔はこのようだった」と思うと、小中学生の成長に大きな希望を抱かずにはおれない。書籍の寄贈を受けて学校側では、お茶や昼食に加えて、その地方特産のマフラーや衣類をお返しにくれる。子供達がお礼に全員で踊りを披露してくれる所もある。一職を終えて定年退職し、年を取ったせいか、子供達の謝意と返礼に自然と涙する。「立派に育ってくれ」との声がどこかから沸いてくる。日立奨学財団と子供達に応援と感謝。校長先生もこの村の出身。ラチャパット大学(チェンマイ)で日本語を勉強したと言う。

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